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50代起業

50代起業の私が「まだ見ぬ競合」に勝手に負けた話:見積書だけで発注してはいけない理由

50代起業の私が「まだ見ぬ競合」に勝手に負けた話:見積書だけで発注してはいけない理由

こんにちは、CloudLab代表の岩森吏央です。

今回は、私が最近経験した、ある案件での「勘違い」と、そこから得た教訓についてお話ししたいと思います。特に、中小企業の経営者の皆さんには、ITシステムやホームページ制作の発注において、ぜひ知っておいていただきたい重要なポイントが含まれています。

競合の「激安価格」に打ちひしがれた私

先日、ある案件で競合の存在を知り、正直かなり落ち込みました。競合が提示しているらしい価格は、私たちCloudLabでは到底出せないような「とんでもなく安い金額」だったからです。

その話を聞いた瞬間、私の頭の中には「これはもう失注だな」「CloudLabでは太刀打ちできない」という思いが駆け巡りました。50代で起業し、地域の中小企業の皆さんのお役に立ちたいと奮闘する中で、価格競争に巻き込まれるのは避けたいと常々思っています。しかし、目の前の「圧倒的な安さ」に、私はすっかり意気消沈してしまいました。

システム開発というのは、単純に「作って終わり」ではありません。お客様のビジネスを理解し、最適な設計を行い、セキュリティ対策を施し、障害時には迅速に対応する。運用が始まってからも、事業の変化に合わせて改修したり、預かったデータを守ったり、万が一の引き継ぎまで見据えたりと、多岐にわたる責任とコストが発生します。

「月額〇〇円ポッキリ」といったシンプルな提案を聞くと、エンジニアとしては「どこまでやってくれるんだろう?」と正直不安になります。それら全てを含んでその価格なのか、それとも一部の機能限定なのか。適切な対価をいただかなければ、質の高いサービスを継続的に提供することはできません。

それでも、当時の私は「AI時代のシステム開発は、もうこんな相場になっていくのか」「設計も保守もセキュリティも真面目に見積もっていたら、価格では勝てないのか」と、かなり「負け犬モード」に陥っていました。

一歩踏み出した質問が明かした「衝撃の事実」

しかし、このまま諦めるのは悔しいという気持ちも残っていました。そこで、私は思い切って、お客様である社長さんに連絡を取り、こう尋ねてみたのです。

「競合さんの提案内容を、もし可能でしたら少し教えていただけませんか?」

他社を否定したいわけではありません。もし本当に、必要な要件をすべて満たした上で、その価格が実現できるのであれば、お客様にとってはそれが最善の選択です。私も安心して「そちらに発注してください」と言えます。

しかし、もしデータ所有権や保守範囲、責任分界点といった、後々トラブルになりかねない部分が曖昧なままの提案であれば、書面で確認しておいた方が良いというアドバイスもしたいと思っていました。値下げ交渉をするつもりはなく、負けなら負けと認めますが、もしCloudLabとしてまだお役に立てる余地があるなら、それをきちんと整理したかったのです。

そして、社長さんから返ってきた言葉は、私にとって衝撃的なものでした。

「提案資料も、見積書も、まだもらっていません」

つまり、まだ「何もない」というのです。口頭で金額を言われただけで、正式な提案書も、比較検討できる見積書も、一切存在していなかったのです。

私の頭の中では、競合会社がすでに立派な提案書を出し、完璧なシステム構成図があり、明確な見積もりと機能範囲が整理された上で、社長さんもほぼそちらに決めている、というストーリーが勝手に出来上がっていました。しかし現実は、まだ資料も何もなく、見積もりすら出ていなかったのです。

私は、まだ存在すらしていない「幻の提案書」に、勝手に負けていたわけです。

営業で本当に怖いのは「自ら撤退すること」

この経験から、私は営業における重要な教訓を得ました。

営業で本当に怖いのは、相手に断られることよりも、断られる前に自分で勝手に撤退してしまうこと。

「他社が安いです」「知り合いが安く作ってくれるみたいです」といった言葉を聞いた瞬間、私たちはつい心を折られがちです。「もう無理だ」「価格で勝てない」「どうせ安い方に行くのだろう」と、自分の中で勝手に負けを確定させてしまう。

しかし、実際には相手はまだ正式な提案書を見ていないかもしれません。今回の私のケースのように、見積もりすら出ていない口頭だけの話である可能性も十分にあるのです。

もしあなたが「他社は安い」という話を聞いた時、焦らずに確認してほしいことがあります。

  • その「他社案」は、本当に公平な判断軸で比較できる状態でしょうか?
  • それは正式な見積もりですか?それとも口頭だけの話でしょうか?
  • 保守や今後の改修費用もコミコミの価格ですか?
  • 要求している機能が、きちんと要件の中に盛り込まれていますか?

特に今回の案件では、お客様の要件自体がまだ決まっていない段階でした。何を作るか決まっていないのに、値段だけが決まっているというのは、システム開発において最も危険なパターンです。

中小企業経営者が知るべき「見積書だけで発注しない」重要性

ここからは、発注する側の立場として、皆さんにぜひ知っておいていただきたいことをお話しします。

「見積書だけで発注しない方がいい」

なぜなら、見積書はあくまで「金額の書類」であり、「約束の書類」ではないからです。後々のトラブルを避けるために、発注前に以下の点を明確にすることをお勧めします。

1. 要件整理書(特に「やらないこと」の明記)

どんな業務を対象にするのか、どんな機能を作るのか、どんな画面が必要か、どんなデータを扱うのか。そして最も重要なのは、「今回はやらないこと」を明確にすることです。発注側は広く期待しがちですが、受注側は狭く見積もって安く見せようとします。この認識のズレが、後で「それは見積もりに入っていません」「それは別料金です」といった揉め事の原因になります。分厚い資料でなくても良いので、「ここまでやります」「ここから先は対象外です」という線引きを明確にしましょう。

2. 機能一覧

自分たちのやりたいこと、解決したい業務に対して、どのような機能が提供されるのかを具体的にリストアップしてもらいましょう。その機能が今回の見積もりに含まれるのか、含まれないのかを明確にしてもらうことで、「全部できます」という言葉の裏にある曖昧さを解消できます。

3. 保守範囲の具体化

システム運用には必ず保守が必要です。「保守費用 月額〇〇円」という記載だけでは不十分です。

  • 問い合わせ対応は含まれるか?
  • 軽微な不具合修正は含まれるか?
  • 仕様変更は含まれるか?
  • 休日対応は可能か?
  • 障害発生時、何時間以内に対応してくれるのか?(翌日対応か、緊急対応か)

会社によって「保守」の意味合いは大きく異なります。これらの点が曖昧だと、運用開始後に「それは保守範囲外です」とトラブルになることがあります。

4. データ所有権・資産の帰属

開発したシステムや蓄積されたデータは、どちらの所有になるのか。万が一、契約を終了する際、自社のデータを問題なく取り出せるのか。ここを明確にしておかないと、いわゆる「ベンダーロックイン」の状態になり、後から費用を上げられても簡単に他社に乗り換えられなくなってしまいます。

5. 責任分界点

複数のシステムや外部サービス、複数のベンダーが関わるような複雑なシステムの場合、何か問題が起きた時に「誰がどこまで責任を持つのか」を明確にすることが不可欠です。ここが曖昧だと、「それはうちの範囲ではないと思っていました」と、誰も責任を取らない「ポテンヒット」状態になってしまいます。特に、基幹システムのような重要な部分を任せる場合は、そのベンダーが本当にその分野のノウハウを持っているのか、慎重に見極める必要があります。

安さだけでない、後悔しないIT活用へ

今回の経験は、私にとって大きな学びとなりました。安さだけを追求するお客様にとって、CloudLabの提案は難しいかもしれません。しかし、私たちは「後悔しないIT活用」を支援したいと考えています。それは、目先の安さだけでなく、長期的な視点でビジネスの成長を支え、予期せぬトラブルから守るためのものです。

次回、私はこの案件において、価格競争ではない部分、つまり責任範囲の明確化や、お客様のビジネスを守るための提案で、どう価値を提供できるか、白黒をつけに行きたいと思っています。

CloudLabは京都・亀岡を拠点に、中小企業のIT活用・AI導入・ホームページ制作を支援しています。今回の記事で触れたような「後で揉めないための準備」から、丁寧にお手伝いさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

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