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50代起業

50代起業のリアル:「うちのIT責任者になってよ」と言われたら?中小企業経営者が知るべきリスクと線引き

先日、ある中小企業の社長さんと商談していた時のことです。話が盛り上がる中で、突然「岩森さん、うちのIT責任者でいいじゃないですか」と言われました。

正直なところ、その言葉を聞いた瞬間は嬉しかったです。50代で起業したばかりの私にとって、信頼されている証だと感じましたし、仕事が増える予感、関係が深まる期待もありました。しかし、同時に「これは安易に『はい、やります』とは言えないぞ」という冷静な声も聞こえてきました。

なぜなら、この一言には、後々大きなトラブルに繋がりかねないリスクが潜んでいるからです。今回は、私の実体験を交えながら、中小企業経営者の皆さんがIT支援を依頼する際、またIT支援を提供する側が受ける際に知っておくべき「IT責任者」という言葉の重みと、その線引きについてお話ししたいと思います。

安請け合いが危ない理由:曖昧な立場の落とし穴

「IT責任者」という言葉は、社長さんからすれば「うちのシステムのこと全部見てくれる人」くらいの意味で使われることが多いかもしれません。しかし、これを受ける側からすると、話は全く別になります。

その瞬間から、私の立場は「外部のIT業者」なのか、「社内責任者」なのか、「顧問」なのか、はたまた「役員」なのか、ぐちゃぐちゃになってしまいます。システムは今や、経理から営業、製造まであらゆる業務に深く関わっています。そのため、曖昧な「IT責任者」という肩書きは、以下のような問題を引き起こしかねません。

  • 責任だけ重く、権限がない状態: 報酬も、稼働時間も、責任範囲も、権限も決まっていない状態で「責任者」を引き受けると、「権限はないのに責任だけ重い」という、最も苦しい状況に陥りがちです。
  • 利益相反の可能性: もし私がITソリューションを提供する会社の代表だとします。その会社のシステムをクライアントに提案している一方で、クライアント側の「IT責任者」になってしまうとどうでしょう? そのシステムを採用する判断が本当に公平だったのか、自社の商品を自分で選んだのではないか、と疑念を抱かれる可能性が出てきます。これは、後々大きな信頼問題に発展しかねません。

このように、一見魅力的な「IT責任者」という打診は、実は多くのリスクと曖昧さをはらんでいます。だからこそ、その場で即答することは避けるべきだと私は考えます。

「外部のIT相談窓口」に言い換える重要性

では、どう対応すれば良いのでしょうか? 私が考えたのは、「責任者になります」と即答するのではなく、「外部のIT相談窓口として支援します」というように言い換えることです。

相手の信頼を損なわないよう、強く否定しすぎるのは避けつつ、「IT面を任せたいと言っていただけるのは大変ありがたいです。前向きに考えたいのですが、外部の提供者として、お互いがすっきりする形で技術支援をさせていただくのが良いかと思います」といったニュアンスで返答します。

これは、相手の信頼に応えつつ、自分も相手も守るための大切な姿勢です。あくまで社内に入るのではなく、外部支援として関わらせてもらう。そして、個人として背負うのではなく、法人として支援する。この線引きが、後々のトラブルを避ける上で非常に重要になります。

支援を受ける際に守るべき3つの線引き

IT支援を請け負う際に、私が特に意識している3つの線引きがあります。これらは、中小企業の経営者の皆さんにとっても、ITパートナーを選ぶ上で重要な視点になるはずです。

1. 決裁者・提案者にはならない

システム導入の採用、支払いの決定、契約の締結は、あくまでクライアントである社長さんや担当者の方が主体的に決めるべきです。私は提案はしますが、最終的な決裁は行いません。これにより、私が自社の利益のために不公平な提案をしているのではないか、という疑念を払拭し、公正な関係を保つことができます。

2. 契約を明確に分ける

IT支援の内容は多岐にわたります。システム利用料、外部IT支援料、個別の開発費用など、これらをすべて「月額費用」として一括にしてしまうと、後で「どこまでが無料対応なのか」「追加機能は誰のものなのか」といった問題が生じがちです。

私は、提供するサービス内容に応じて契約を細かく分けることをお勧めしています。例えば、私が提供するシステムの利用料、ITに関する一般的な相談やアドバイスに対する外部IT支援料、そしてクライアント専用のカスタマイズ開発に対する個別開発費用、といった具合です。これにより、費用と提供範囲が明確になり、お互いの認識のズレを防げます。

3. 著作権・ノウハウは守る

ITサービスを提供する側として、汎用的な機能やノウハウは、私たちの財産であり生命線です。もし、私がクライアントの「IT責任者」として社内に入り込んでしまうと、「これはうちのために作ったものだから、他では使わないでほしい」と言われる可能性も出てきます。

そのため、汎用的な機能や横展開可能なノウハウは提供側に残し、クライアント専用のデータやブランド、特別な作り込みに関しては、別途契約を結ぶ形にしています。この線引きを明確にすることで、互いの権利を守り、健全なパートナーシップを継続できます。

「いないと止まる人」にならないために

IT責任者という言葉の誘惑は大きいですが、私が目指すのは、クライアントのIT活用を自立的に進められるよう支援することです。特定の個人に依存し、「その人がいないと何も進まない」という状況は、クライアントにとってもリスクになります。

あくまで外部のIT相談窓口として、契約と報酬が書面で明確に分かれており、無制限の何でも対応はしない。仕様や設定、ドキュメントをしっかり残し、誰が見ても理解できる状態にする。このような当たり前のことを一つずつ整理していくことで、中小企業のIT活用は着実に前進します。

50代で起業し、日々中小企業のIT課題と向き合う中で、この「責任者」という言葉の深さと難しさを改めて痛感しました。皆さんの会社でIT活用を進める上での一助となれば幸いです。

CloudLabは京都・亀岡を拠点に、中小企業のIT活用・AI導入・ホームページ制作を支援しています。ITに関するお悩みや、具体的な支援についてご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。

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