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営業・事業づくり

「作れます」では覚えてもらえない。「動く試作品」が名刺代わりになる理由

営業先や経営者同士の交流会で、「弊社は業務システムの開発ができます」「AIやスマホアプリの構築に対応できます」と伝えた経験のある方は多いと思います。

私自身、エンジニアとして独立してからさまざまな場所で自社の事業を説明してきました。しかし、正直なところ、言葉だけで「〜が作れます」「〜に対応できます」と伝えても、相手の記憶にはほとんど残らないのが現実です。同じようなアピールをする会社やフリーランスは世の中にごまんといるからです。

では、知名度も実績も限定的な小さな会社や個人事業主が、どうすれば相手の記憶に留まり、次の相談につなげられるのか。最近、私自身が試作した小さなアプリと、それに対する地元の経営者の方々の反応を通して、1つの確かな手ごたえを得ました。

結論から言えば、「言葉で説明する代わりに、実際に手元で動く試作品(プロトタイプ)を見せる」ということです。


交流会での「悩み」から作った、顔認識の営業支援アプリ

私は最近、地元の経営者交流会や事業者の集まりに参加する機会が増えています。そこで毎回感じていた個人的な悩みがありました。それは、「一度お会いしたはずなのに、再会したときに顔は覚えていてもお名前や前回の会話内容がすぐに出てこない」ということです。

失礼のないよう表面上の会話でその場を乗り切るものの、心の中では申し訳なさと焦りを感じていました。ある時、地元の経営者の方にこの悩みを打ち明けると、「実は俺もまったく同じで困っていた。誰かパッと名前を思い出せる仕組みを作ってくれないかな」という話になりました。

そこで私は、スマホのカメラで相手の顔を認識すると、登録しておいたお名前や前回の会話メモが画面に表示されるという簡易的なアプリを試しに作ってみることにしました。

誰かから開発費をもらったわけでもなく、製品として売り出す計画があったわけでもありません。「自分自身の困りごとの解消になりそうだし、動いたら面白いかもしれない」という軽い発想で動いた試作でした。


「売れるか」ではなく「動く名刺」という視点

最初は、技術者としての癖で「こんな未完成なものを商品として売れるのだろうか」「お金にならないものを作っても意味がないのでは」と考えがちでした。

ところが、出来上がった試作品を相談に乗ってくれた経営者に見せたところ、まったく思いがけない反応が返ってきました。

「これが売れるかどうかは別として、実際に動くものを見せられたら『この人は口先だけでなく、本当にこういうものを形にできる人なんだ』って記憶に残るよ」

この言葉を聞いたとき、私の中でハッと視点が変わりました。

試作品というのは、「完成させて売り物にするか、失敗して捨てるか」の二択ではないのだと気づいたのです。自分が持つ技術や対応力を証明する「動く名刺」として活用すれば、これ以上ない営業ツールになります。

たとえば、「顔認識システムを作れます」と口で説明された側は、「へえ、そうなんですね」と返答して、その日の夜には忘れてしまうのが関の山です。しかし、目の前でスマホを取り出し、カメラをかざして実際に名前が表示される様子を見せれば、相手の受け止め方は一変します。「この人は本当に作れる人だ」という深い印象が残るのです。


試作品を見せることで生まれる3つのメリット

実際に動く試作品を持って人と会うようになり、単なる自己紹介では得られないメリットが3つあると実感しています。

1. 数か月後の「思い出してもらえる確率」が上がる

その場ではアプリの購入につながらなくても、「地元にちょっと変わったアプリをパッと作れる技術者がいたな」という記憶が相手に残ります。数か月後にその会社で新しいITの課題やシステム化の話が持ち上がったとき、真っ先に候補として思い出してもらえる可能性が高まります。

2. 相手の側から使い道やアイデアが出てくる

作りかけのプロトタイプを見せると、見せた相手の頭の中で想像力が働き始めます。「これ、交流会だけじゃなくて会社の受付に置いたら来客確認に使えないか?」「スマートグラスと連動させたらイベント現場で使えるのでは?」など、自分一人では思いつかなかったような具体的な用途を相手のほうから提案してもらえるようになります。

3. ニーズの有無を事前にテストできる

ある製造業の役員の方にこの試作アプリをお見せしたところ、「これは面白い、ぜひ使ってみたい」と強い関心を示していただけました。お金をかけて完璧なシステムを作り込んでから営業を開始するのではなく、試作品の段階で見せることで「世の中にニーズがあるのかどうか」をノーリスクで検証することができます。


試作品営業で気をつけるべき注意点

一方で、この「試作品を見せる営業」には注意点もあります。

1つ目は、本題をぼかさないことです。別の打ち合わせや相談の最中に、脈絡もなく試作品を長々と見せ始めると、「結局何の話をしに来たのか」と相手を困惑させてしまいます。あくまで自己紹介の補足や、「ついでにこんな面白いものも作っていまして」といった自然な文脈の中で差し出すことが大切です。

2つ目は、作りすぎて「何屋さんか」を曖昧にしないことです。技術者はものづくりが楽しいため、あれもこれもと試作品を作りすぎてしまいがちです。いろいろ見せすぎると、相手は「結局この人は何の専門家なのか」が分からなくなってしまいます。相手の業界や課題に合わせて、最も刺さりそうな試作品を1つだけ見せる、という引き算の意識が必要です。


完成してから売るのではなく、プロトタイプで会話を始める

50代で起業した私にとって、大企業のような営業力や知名度はありません。営業活動において苦戦することも多々あります。

しかし、完璧な商品を完成させてから売り歩くのではなく、未完成であっても「動く試作品」を携えて会話を生み出し、相手の反応を見ながらサービスを形作っていくアプローチは、小さな会社だからこそ取れる強力な戦略だと確信しています。

言葉で「作れます」と伝える限界を感じている方は、小さなプロトタイプを1つ作って見せてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

CloudLabは京都・亀岡を拠点に、中小企業のIT活用・AI導入・ホームページ制作を支援しています。お気軽にご相談ください。

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