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AI・IT活用

50代で起業。AI見積もりアプリ開発、現場のリアルな声と向き合う日々

CloudLab代表の岩森吏央です。
私は50代で起業し、中小企業のIT活用やAI導入を支援しています。先日、ある塗装会社さんで「建築図面からの見積もり作成が大変だ」というお話を伺いました。この課題をAIで解決できないかと考え、試作品のアプリを開発し、現場に持っていくことにしたのです。

AI見積もりアプリ、試作品を現場へ。期待と現実のギャップ

開発したアプリは、塗装会社さんが普段使っておられる建築図面(PDF)を読み込ませると、AIが外壁や屋根、軒天、窓回りといった見積もりに必要な数字を自動で拾い出すというものです。まだ完成品ではありませんでしたが、この試作品を携えて現場へデモに伺いました。

正直なところ、現場の反応はかなり好意的でした。「これ、楽になると思う」「こういう作業に時間を取られている人は多いだろう」といった言葉をいただき、心の中ではガッツポーズでした。50代で起業した身として、自分の作ったものが現場に響くのは何よりの喜びです。

しかし、ここで浮かれてはいけないと自分に言い聞かせました。「良い反応」をいただくことと、「正式な発注」をいただくこと、そして「実際に入金されること」は、全く別の段階です。いただいたのはあくまで最初の好感触であり、まだ売れたわけではありません。このギャップを冷静に見つめる必要があります。

AIは「自信満々に間違える」? 見積もりにおけるAI活用の難しさ

今回のデモでは、私自身の課題も浮き彫りになりました。アプリを作っている私自身が、まだ図面を完全に読み込めていない部分があったのです。現場のご担当者の方に、マーカーで線を引いて説明していただきながら「このピンクの線は何の長さを表しているんですか?」「この計算式のプラス20は何を意味するのですか?」と質問を重ねる場面もありました。デモというより、半分は図面の読み方や見積もり作成の家庭教師をしていただいているような感覚でした。

これは業務知識を十分に知らないまま作り始めてしまった、私の順序ミスの裏返しでもあります。本来なら、もっと徹底的に図面の読み方を理解してから、試作品とはいえ開発を始めるべきだったのかもしれません。

そして、今回の件で改めて感じたのは、AIの持つ「自信満々に間違える」という側面です。建築図面には、設計事務所ごとの癖や書き方の違い、記号の多様性があります。塗装する場所としない場所、屋根の形やバルコニーの有無など、現場ごとの細かな考慮が必要です。これら全てをAIに判断させようとすると、非常に危険です。AIは間違っている時でも、もっともらしい数字を平然と出してきます。見積もりの間違いは、直接お金に直結します。「AIが間違えました」では済まされないのです。

人間とAIの「二人三脚」が最適解か?

そこで私が考えているのは、AIと人間の「二人三脚」による見積もり作成です。AIが得意な部分はAIに任せ、AIが苦手な部分は人間が補う。具体的には、AIが図面を読み取って大まかな数量を拾い、その上で人間が画面上でクリックして正確な長さを測ったり、面積を算出したりする仕組みです。

縮尺を合わせておけば、画面上で2点をクリックするだけで長さが出たり、外周をなぞれば自動で面積が出たりするような機能です。AIが100%正確に当てることが重要なのではなく、AIが外した時に人間がそれに気づき、最終的な数字を人間が責任を持って確定させること。お金に直結する部分だからこそ、この「人間による最終確認」は譲れないと考えています。このアプローチは、現場のご担当者にも好意的に受け止められました。

現場からの「ダメ出し」こそ宝。具体的な要望が示す価値

今回のデモで最も嬉しかったのは、現場のご担当者が本気で突っ込んでくれたことです。「それなら、この数量も拾ってもらわないと」「仕上げ表のここも見てほしい」「この記号も拾ってほしいんだけど」「この長さとこの長さを全部足してくれたらもっと楽になる」といった、具体的で率直な要望が次々と出てきました。

これは単なる社交辞令ではありません。「自分の仕事で使うならこうしてほしい」という、相手の方がアプリに価値を感じてくれている明確なサインだと受け止めました。もちろん、これらの要望は裏を返せば「今まだできていないことリスト」でもあります。製品がまだ完成から遠いというサインでもありますが、試作品を叩いてもらうのが今回の目的でしたから、狙い通りに進んでいると感じています。

要望がたくさん出たということは、やるべきこともたくさん増えたということ。嬉しい反面、宿題も山積です。この宿題に一つずつ真摯に向き合っていきたいと考えています。

現場が本当に求めるのは「最先端」ではなく「面倒の解消」

現場で話していて改めて感じたのは、AIやDXといった言葉が大仰に聞こえるかもしれませんが、現場で本当に求められているのは、もっと地味なことだということです。

  • 紙に転記しなくていい
  • 定規で測らなくていい
  • 同じ数字を何回も打ち込まなくていい
  • 工程表を毎回ゼロから作らなくていい

つまり、現場が欲しいのは「最先端のAI技術」そのものではなく、「面倒な作業が減ること」なのだと痛感しました。作る側はどうしてもAIのすごい機能や技術的な工夫を語りたくなりますが、使う人にとって技術はあくまで手段。自分の仕事が少しでも楽になるか、毎回やっている面倒な作業が減るかどうかが本質です。これは塗装の現場に限らず、多くの中小企業の現場で共通するニーズではないでしょうか。

私は上から目線でDXを語れる立場ではありません。むしろ現場の人々に教えてもらいながら、共に課題を解決していく側だと考えています。

50代起業のジレンマ:個別最適化と汎用性の狭間で

今回のアプリ開発を通じて、50代で起業した私が常にぶつかるジレンマにも改めて直面しています。

このアプリは、ある塗装会社さんの計算式や業務フローにぴったり合わせ込めば合わせ込むほど、その会社専用の「最高の道具」になっていきます。現場の方が喜んでくれるのも、自分たちのやり方にぴったりはまるからです。しかし、その一方で、合わせ込めば合わせ込むほど、今度は他の会社には売れない、汎用性の低い道具になってしまうのです。

これは今回が初めてではありません。以前、別の業務改善ツールを開発した際にも、同じ壁にぶつかりました。特定の事業者さんに徹底的に合わせると深く刺さるものの、横に広げにくい。汎用的にしようとすると、どこにも深く刺さらない。このジレンマに、私は毎回悩み続けています。

心の中ではガッツポーズしつつも、同時にかなり冷静な自分がいます。良い反応をいただけたことは大きな一歩ですが、正式な受注や入金にはまだ至っていません。この現実をきちんと見据え、浮かれすぎずに次の一手を考える必要があります。

未完成でも現場へ。悩みながら一歩ずつ

今回の挑戦で一つ分かったことがあります。それは、机の上で考えているだけでは何も進まないということです。未完成であっても、動くものを持って現場へ行く。そこで本気のダメ出しをもらい、それを改善してまた持っていく。この繰り返しの中でしか、本当に現場で使える道具は生まれないのだと確信しました。

AIによる図面自動見積もり機能は、まだ「商品」と呼べるほど完成していません。しかし、現場の人が本気で宿題を出してくれたことで、次に何を直せばいいのかが明確に見えました。これだけでも、大きな収穫です。

AIに全てを任せるのではなく、AIと人間が二人三脚で見積もりを作っていく。この方向性で、もう一度アプリを作り込んでみようと思います。前進のサインは出ていますが、正直なところ、まだ答えは出ていません。現場を知らない私が、現場の人に教えてもらいながら、悩みつつ、現場で本当に使える道具を作っていく。しばらくはこの悩みの途中にいると思いますが、少なくとも次に進むべき道は見えています。今日のところは、そんな報告でした。

CloudLabは京都・亀岡を拠点に、中小企業のIT活用・AI導入・ホームページ制作を支援しています。ITやAIをどう活用すれば良いかお悩みでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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