こんにちは、CloudLab代表の岩森です。
今回は、先日地元の塗装会社さんへ業務ヒアリングに伺った際のお話の続きです。きっかけは、その会社の社長さんがSNSをされており、私がDMでご挨拶に伺ったことから。会社の紹介などをするうちに話が盛り上がり、「一度、ヒアリングに来てくれないか」と声をかけていただきました。
前回のヒアリングでは、外壁診断書作成の難しさについてお聞きしましたが、次にお話しを伺ったテーマは「見積もり作成」業務でした。
見積もり作成のリアル – 単なる入力作業ではなかった
正直なところ、私は見積もり作成と聞くと、数量と単価を入力して金額を出す、比較的単純な事務作業というイメージを持っていました。しかし、実際にヒアリングを進めていくと、私のイメージは大きく覆されました。
塗装会社さんの見積もりは、単に数字を打ち込むだけのものではありませんでした。
- 図面と現場の読み解き: まず図面を見て、塗る場所、塗らない場所、足場が必要な範囲などを判断します。必要に応じて現場も確認します。
- 専門用語と数量の拾い出し: 外壁、屋根、シーリング、甘い、点、サッシ回りといった専門用語が次々と出てきます。これら一つひとつの箇所について、図面や現場写真から面積や数量を正確に拾い出す作業が必要です。
- 経験に基づく判断: どこを正確に測り、どこを概算で良いとするか。材料のロスや作業効率、天候による影響など、様々な要素を考慮しながら最終的な数字を導き出す必要があります。
正直、途中からは完全に専門外。職人さんからすれば当たり前のことを、「それはどこの部分のことですか?」「その数字は何を表しているのですか?」と、何度も質問してしまいました。相手の方も「そこから説明せなあかんのか」と思われたかもしれません。
しかし、ここで「分かったふり」をしてはいけない。IT支援者が最も避けるべきは、現場の業務を深く理解しないまま「それならシステムでできますね」と安易に言ってしまうことだと、改めて感じました。
職人の「頭の中」にこそ価値がある
特に印象的だったのは、見積もりの多くの部分が、現場の人の「頭の中」で組み立てられているという事実です。もちろん図面や数字は存在しますが、それをどう読み解き、どこを拾うのか、どこを正確に出し、どこを概算で良いとするかといった判断は、長年の経験に強く依存しています。
見積もり作成は、単なる事務作業ではなく、そこに「専門判断」が介在する、非常に奥深い仕事なのです。
この本質を理解せずに、「AIで見積もりを自動化しましょう」と安易に進めてしまうとどうなるか。おそらく、現場で使われないシステムになってしまうでしょう。現場の職人さんや営業担当者が「自分たちの仕事とは違う」と感じてしまえば、どんなに高性能なツールも宝の持ち持ち腐れです。
AI/IT活用の現実的なアプローチ – スモールスタートの重要性
では、全く自動化できないのか?決してそうではありません。
全てを一気に自動化するのは難しいかもしれませんが、「一部から始める」のであれば、可能性は大きく広がります。
例えば、今回のヒアリングでも具体的なアイデアが出ました。
- 図面の中から特定の塗装記号を自動で拾い出し、該当箇所に印をつける。
- それを一覧にして、見落としを防止する。
これだけでも現場の職人さんは「かなり助かる」とおっしゃっていました。人が目で見て、細かい記号を一つひとつ拾い出す作業は、時間も手間もかかりますし、見落としのリスクもあります。
AIは人間の判断を全て置き換えるのではなく、まずは「人間が見るべき場所を減らす」「探す時間を減らす」「チェック作業を楽にする」といった補助的な役割から始めるのが、現実的なスモールスタートだと感じました。
見えない思考プロセスを紐解くことの重要性
もう一つ感じたのは、専門業務は、完成したアウトプットだけを見ても「ほとんど見えない」ということです。
完成した見積もり書だけを見ても、そこに至るまでの職人さんの思考プロセスや、営業担当者の判断の経路は見えません。現場調査、写真、図面、過去の経験、協力業者の単価設定、そして会社として残したい利益計算……これら全てを考えながら、見積もりが作られていることが、ヒアリングを通して初めて分かりました。
業務改善をする側は、表面的な「この図面を作ればいい」「この画面を再現すればいい」という部分だけでなく、その手前の「現場の人が何を考え、どんな思考を通ってその数字が出ているのか」を、丁寧にヒアリングして明らかにする必要があるのです。
私自身、元々データ基盤やシステム設計の仕事をしてきましたが、地元の中小企業の現場に入ると、業界ごとの専門性の深さに毎回驚かされます。塗装業には塗装業の見方があり、建設業には建設業の判断があり、営業担当者には営業担当者の段取りがある。そこを理解しないままITだけを持ち込んでも、現場で使われないシステムになってしまうだけだと改めて痛感しました。
まとめ
今日のヒアリングで改めて感じたのは、見積もり作成が単なる入力作業ではなく、「職人や営業担当者の頭の中にある、判断の積み重なり」だということ。
だからこそ、まずは「ここだけでも楽になる」という小さな改善から始める姿勢が、DXやIT支援において何よりも大事だと再認識しました。現場のリアルを知り、そこに寄り添うこと。それが、本当に役立つIT活用への第一歩なのだと思います。
CloudLabは京都・亀岡を拠点に、中小企業のIT活用・AI導入・ホームページ制作を支援しています。現場の「見えない課題」を一緒に紐解き、貴社に最適なIT戦略を考えるお手伝いをさせていただきます。お気軽にご相談ください。
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