50代でCloudLabを立ち上げ、地域の中小企業様と向き合う中で、私は日々多くの学びを得ています。
先日、地元の建設・塗装会社さんへ営業実務のヒアリングに伺いました。DXや基幹システム導入、AI活用といったテーマでのご相談につながれば、という期待を胸に訪問したのですが、そこで見えてきたDXの入り口は、私の想像とは少し違う、しかし非常にリアルなものでした。
DXの最初の敵はAIではなくExcelだった?
正直なところ、訪問前は「AIで見積もりを自動化できますか?」「工程管理を一元化できますか?」といった、より大規模なご相談を想定していました。しかし、現場で最初に出てきた「困りごと」は、実にシンプルでした。
「現場写真をExcelに貼るのが、めちゃくちゃ面倒くさいんです」
これだけ聞くと、「え、そこ?」と思われるかもしれません。AIやDXという言葉が飛び交う現代において、まさかExcelへの写真貼り付けが最初の課題だとは。しかし、この「地味な面倒くささ」こそが、DXの入り口に他ならないと私は感じました。
「面倒くさい」の奥に潜む本質的な課題
なぜ、Excelへの写真貼り付けがそこまで面倒なのか?詳しくヒアリングしてみると、その作業の背景には、実に多くの重要な要素が隠されていることが分かりました。
現場調査では、物件によっては30枚、50枚、大きなものだと100枚もの写真を撮影します。これらの写真は単なる記録ではなく、外壁の診断書や施工範囲の説明資料に使われる、極めて重要な資料です。
そして、写真一枚一枚には、撮った人の「意図」が込められています。
- この写真はひび割れを見せたい
- この写真は外壁全体を見せたい
- この写真はシーリングの劣化を説明したい
- この写真は防水部分の説明に使いたい
つまり、どの写真をどこに、どのような意図で配置するかは、撮影した本人にしか分からない判断が含まれているのです。「適当にExcelに貼っておいて」とは、なかなか言えない作業なんですね。
現在の作業は、撮影した写真をPCに移し、Excelに挿入し、サイズを調整し、順番を入れ替え、レイアウトが崩れたらまた修正する……。聞いているだけで骨が折れるような作業です。小さい案件でも20〜30分、大きな案件ではさらに多くの時間が費やされているとのことでした。
これは単なる事務作業ではなく、営業資料の作成であり、見積もり説明の準備であり、ひいてはお客様への提案品質に関わる、会社の売上にも直結する重要な作業なのです。
小さな改善がもたらす大きな変化
この「Excelへの写真貼り付け」という、一見すると些細な課題の改善が、実は多岐にわたる効果を生み出す可能性があると私は考えました。
例えば、スマートフォンで撮った写真が自動でクラウドにアップロードされ、診断書の日報に仮で並べられる。PowerPointのスライドを並べ替えるように、直感的に写真の順番を入れ替え、必要なコメントだけを入れれば資料が完成する。これだけでも、現場の負担は劇的に軽減されます。
しかも、これは単なる時短に留まりません。
- 資料の品質が安定する:誰が作っても一定レベルの資料が作成可能に。
- 写真の保存場所が整理される:必要な写真がすぐ見つかる。
- 情報共有が容易になる:どの現場で何を撮ったか、一目でわかる。
- 過去案件の見返しやすさ向上:ナレッジの蓄積と活用。
- 若手への引き継ぎがスムーズになる:属人化の解消。
このように、Excelでの写真貼り付け作業を改善するだけで、現場情報の整理、営業資料の標準化、そして属人化の解消へと繋がっていくのです。DXは、いきなり会社全体を大きく変えることではなく、現場の人が毎日感じている「地味に面倒くさい」作業を見つけ、そこから始めることが重要だと改めて感じました。
経営層に響く提案の視点
もう一つ、今回のヒアリングで得た大きな学びは、改善策を提案する際に「楽になります」だけでは、経営層には響かないということです。
現場の方々にとっては、写真貼り付け作業がなくなったり、資料作成が早くなったりするだけでも大きなメリットです。しかし、経営者の方々は、そのさらに一歩先を見ています。
「その空いた時間で何ができるようになるのか?」
- 見積もりの数を増やせるのか?
- お客様への提案品質を上げられるのか?
- 営業が次の実活動に動けるようになるのか?
- 管理職が判断業務に集中できるようになるのか?
- ひいては、会社全体の利益に繋がるのか?
ここまで踏み込んで説明できないと、単なる「便利なツール」で終わってしまいます。私もつい、「この作業が楽になります」「時間が短縮できます」といった目の前のメリットばかりを語りがちですが、社長に提案するなら、「楽になる。だから何が増えるのか、何に時間を使えるのか、会社にどう貢献するのか」までセットで伝える必要があると痛感しました。
スモールスタートで確実なDXを
DXと聞くと、AIや自動化、ダッシュボード、データ連携といった派手なものを想像しがちです。もちろん、これらは将来的に必要になるものですが、現場のリアルはもっと地味なところにあります。
写真を貼る、資料を整える、写真の順番を入れ替える、同じような説明資料を毎回作っている……。これらの「地味に辛い作業」は、一つ一つに判断が入るため、人に任せにくいという特徴があります。だからこそ、現場に入り込み、これらの作業を一つずつ紐解いて、「こうすればできますよ」「こんな形で整理できますよ」と具体的に示すことが、地方の中小企業向けのITコンサルティングでは非常に大事だと考えています。
ただし、深く入り込めば入り込むほど、業務は複雑になります。安易に「できます」と断言すると、かえって自分の首を絞めることにもなりかねません。
だからこそ、いきなり大きく始めるのではなく、スモールスタートが重要です。まずは、今回の写真整理のように、一つの課題を解消する。外壁診断書作成の手間を少し減らす。その小さな改善で、本当に現場が楽になるのか、提案品質が上がるのか、会社にとって価値があるのかを判断する。そして、その効果を見ながら、次のステップに進む。この慎重かつ着実なアプローチが、成功への鍵だと私は確信しています。
DXの入り口は、派手なAIやシステムの導入ではなく、現場の人が毎日感じている「地味な面倒くささ」の中にあります。その小さな課題を見つけ、解決へと導くことが、地域経済を支える中小企業の未来を拓く第一歩だと、今回の訪問で改めて感じた一日でした。
CloudLabは京都・亀岡を拠点に、中小企業のIT活用・AI導入・ホームページ制作を支援しています。現場の「地味な面倒くささ」にお悩みでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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