CloudLab代表の岩森です。50代で起業し、地元京都・亀岡を拠点にITやAIを活用した業務改善支援、そしてホームページ制作を手掛けています。
最近、自分の営業スタイルについて気づいたことがあります。私は営業に伺うたびに、なぜか「受注前に何かを作ってしまっている」のです。
ホームページのサンプル、経営ダッシュボードの試作、そして今回は司法書士事務所向けのPDF自動整理ツール。これらは、本来なら見積もりを提示し、正式な発注をいただいてから着手するのが一般的でしょう。しかし、私の場合は先に作って見せてしまう。このやり方について、「これって営業として正しいのか?単なる無料奉仕になっていないか?」そんな葛藤を抱えながら、試行錯誤している私のリアルな話をお伝えします。
ある士業の先生との出会い:PDF整理の地味な重労働
先日、ある士業の先生にご挨拶に伺った際、先生から「実はこんなことで困っている」と打ち明けられました。
それは、日々発生する大量のPDFファイルの整理業務です。
PDFを開き、管理番号を確認し、ファイル名を変更し、案件ごとのフォルダに移動させる――。一つひとつの作業は、おそらく1件あたり10秒程度で終わるでしょう。しかし、これが毎日何十件、何百件と発生すると、その負担は決して小さくありません。地味に時間を奪われるだけでなく、神経も使う作業です。
専門家の「集中力」を奪う見えないコスト
さらに問題なのは、この単純作業が専門家の「集中力」を途切れさせてしまうことです。本来、先生方はより重要な判断や確認、お客様との対話に集中すべきです。その途中に「PDFを整理しなきゃ」というタスクが割り込むと、一度途切れた集中を取り戻すのに、想像以上に時間がかかります。
私自身も経験がありますが、人間の集中力は一度切れると、すぐに元には戻りません。その間に別の思考が入り込み、「あれ、何をしていたんだっけ?」となることも少なくありません。つまり、失っているのは「10秒」という時間だけではなく、専門家としての「集中力」と「思考の流れ」なのです。この見えないコストは、業務の質や生産性にも大きく影響します。
IT・AIで「集中力を守る」ツールを構想
この話を聞いた時、「これはITで解決できる」と直感しました。
私が構想したのは、PDFをOCR(光学文字認識)で読み取り、管理番号を自動で認識し、ファイル名を変更、さらに案件ごとのフォルダへ自動で仕分けるツールです。
もちろん、実現にはいくつか技術的な課題があります。先生が扱っているPDFは紙をスキャンした画像データが多いため、単純な文字情報ではなく、OCRによる高度な画像認識が必要になります。OCRの精度や管理番号のルールに合わせた調整も不可欠です。しかし、これらの課題をクリアすれば、プロトタイプなら作れる。そう思いました。
なぜ、受注前に「作ってしまう」のか?私の営業スタイル
一般的なビジネスプロセスでは、まず見積もりを提示し、内容に合意いただいてから正式な発注を受け、それから開発に着手するのが普通でしょう。これはビジネスを進める上での原則です。
しかし、私には起業初期ならではの弱みがあります。
- 実績が少ない: 50代で起業したばかりで、まだ大きな実績や大企業の看板があるわけではありません。
- 営業トークが苦手: 「これは絶対便利です!」「御社の未来が変わります!」と自信満々に語りかけるのが、どうも苦手なのです。心の中で「ほんまかいな?」と、もう一人の自分がツッコミを入れてしまうからです。
だからこそ、私は「口で売る」よりも「先に作って見せる」というスタイルになってしまうのです。
これは一種の「試食営業」のようなものかもしれません。スーパーで「この唐揚げ美味しいですよ!」と説明されるよりも、実際に一口食べて「美味しい!」と実感してもらう方が、何倍も説得力があります。ITサービスも同じです。「便利ですよ」と説明するよりも、実際に触れてもらい、「これは本当に楽だ」と感じてもらうことが、何よりも重要だと考えています。
「無料奉仕」の怖さとの向き合い方
もちろん、この「試食営業」には大きなリスクが伴います。
せっかく時間をかけて作ったツールが、最終的に受注につながらない、つまり「無料奉仕」で終わってしまう可能性もあるからです。会社員時代は、良いものを作って「便利ですね」と言われればそれで満足でした。しかし、独立した今、作ったものがお金に変わらなければ事業は継続できません。この現実を前に、「便利ですね、ありがとうございます!それでは、こちら請求書です!」という流れに慣れるまでには、まだ時間がかかりそうです。
今回の司法書士事務所向けのツールも、どれくらいの価格で提案すべきか、まだ明確な答えは出ていません。正直、後出しになってしまうことへの葛藤もあります。しかし、やはり実際に使ってもらい、「これは手放せない!」と感じてもらってから、その価値に見合った価格を提示したい。そんな思いが強くあります。ボランティアで終わらせないために、試用期間を設けたり、ライセンスキーでの管理を検討したり、具体的な戦略を練っているところです。
価値の伝え方:単なるツールから「集中力を守る」存在へ
「PDFの整理ツール」とだけ聞けば、「そんな機能にお金は出せない」と思われるかもしれません。しかし、私が作っているのは、単なるファイル整理ツールではありません。それは「専門家の集中力を守るツール」であり、ひいては「業務の質と生産性を高めるツール」です。
10秒の作業が奪うのは時間だけでなく、本来の業務に集中する貴重な時間とエネルギーです。そこをITで解放し、先生方がより本質的な業務に専念できる環境を提供する。ここにこそ、このツールの真の価値があると考えています。
私は自分の作ったものやサービスの価値を控えめに語ってしまう癖があります。これは「自分で自分の価値を下げている」とよく言われますし、自分でもそう感じています。まるで、作りたて熱々の唐揚げに、提供する前に半額シールを貼ってしまうようなものです。これからは、このツールの本質的な価値を、しっかりと、そして誠実に伝えていかなければなりません。
起業初期のリアルな試行錯誤
今回の試みが成功するかどうかは、まだ分かりません。これは成功談ではなく、50代で起業した私が、日々どんなことを考え、どんなことに悩み、どんな試行錯誤をしているかをお伝えする「ログ」のようなものです。この経験が、同じように起業を考えている方や、中小企業のIT活用に悩む経営者の皆様にとって、少しでも参考になれば幸いです。
CloudLabは京都・亀岡を拠点に、中小企業のIT活用・AI導入・ホームページ制作を支援しています。業務改善やIT導入にお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
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